スタートライン。
わがまま

消えない傷

 出会って3ヶ月ほど経ったある日、忘れられない事件が起こった。
 ある占い師が言うにはお互いにお互いを忘れないために、彼にだけ大きな外傷を残し、私には罪悪感という内傷を残す事故に遭った。彼の運転するバイクの後ろに乗って、駅まで私を送ってくれている時、前方不注意の車にやられてしまった。彼の二十歳の誕生日をぶち壊した瞬間、私は余裕で意識を無くしていた。赤く染まって訳がわからない痛みのある足を引きずり私のそばに駆け寄った彼は必死に私の名前を呼んでくれた。私にははっきりと彼の声がどこかで聞こえていた。正気に戻った瞬間に彼が倒れた。一瞬で、私は死んでしまう!と思った。死なないでって狂ったように叫んでいた気がする。初めて乗った救急車は彼と一緒で、初めて乗った救急車で号泣していた。『お前を置いて死ぬか…。』彼は私と約束をした。忘れたくても忘れられない。彼とサヨナラしていた頃にも同じ夢を何回も見た。結局私は無傷で彼は重症。罪悪感を残し私は目を覚ます。忘れようとしていた頃、何回も同じ夢を見た。占い師の予言は的中。私は彼を忘れることはただの1度も無かった。


 彼を忘れること、それは今考えると私を捨てることに等しいのかもしれない。私は彼に出会って初めて新しい自分を発見した。相手を思うからこそ抱くジェラシーだったり、伝えたくても伝える勇気のない自分へのフラストレーションだったり。苛々して、I LOVE自分だった私は、I HATE 自分になったりもした。苛々を自分で処理できずに、大切なはずの彼へ、大好きなはずの彼へぶちまけていた。最低だった。まぁ、そんな私の身勝手で私は彼と自らサヨナラをする嵌めになるのだが…。本当に神様はいるのだろう。
 『お天道様はちゃんとみてるよ…。』
この言葉を小さいときに何度聴いたんだろう…。無論、今でも充分小さいけれど。お天道様はちゃんと私たちを見守ってくれていたのだろう。私は彼に言った事がある。『私たちが一緒になる運命であれば、二人はまたきっと会えるよ。』何て、無責任な…。口からデマカセって思われていると思ってた。心の純粋な彼はそれをどこまでも信じていた。信じるものは救われる。ごもっともだ。二人はちゃんと、再会することになるのだ。まさに有言実行。心から、お天道様ありがとう。感謝致します。なんてね…。
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