職場内恋愛





「それは知ってるよ。

でも大人の恋は子供の恋よりもっと複雑。


大人は…子供みたいに素直じゃないから。」


奈々ちゃんは切なげに笑った。

そんな顔されたら…何にも言えないじゃん。




「分かったよ。
奈々ちゃんの言いたいこと、分かった。


だけど…藤堂先生、取られたらどうするの?

あのときやり直せば良かった、って後悔するでしょ?」


ま、取られることなんてないだろうけど。

だって藤堂先生はまだ奈々ちゃんに夢中なんだもん。


まあ当の本人たちはお互いが相手に愛されてるとは知らないだろうけど。




「そのときは…そのときだよ。

仕方ないもん。


私に何か言う権利なんてない。


じゃ、またね。真。」


先にクツを履き替えた奈々ちゃんはあたしのところを去って行った。



大人ってやっぱり、素直じゃない。


意地張って、大人ぶって。

ムダにプライドが高い。



好きなら好き、って素直に言えばいいのに。


自分のキモチ…素直に口に出すことができればそれほど楽なことはないのに。



なんで大人はそんな簡単なことに気づかないんだろ。



奈々ちゃんも、藤堂先生も、相手のこと…考えすぎじゃないのかな…





―Side 真 終―









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