職場内恋愛
「じゃあ…そろそろ戻るね。
また夜電話します」
奈々はそう言って秘密の場所を出て行く。
俺はいそいそとポケットからタバコを取り出し一服。
ふぅ~…と息を吐き出しながら思うのはやっぱり奈々で。
俺…助かったよ…
と誰に言うでもなく呟いてみる。
でも本当に良かった。
フラれなくて本当に良かった。
とりあえず涼と山崎先生には報告しないとな。
あの2人、ずっと心配してくれてたし。
京地はきっと、明日会ったときにはもう知ってるんだろうな。
奈々、嬉しいことあるとすぐに顔に出るから。
それで京地に問い詰められて。
奈々は白状して。
明日俺はきっと京地に冷やかされるんだ。
ニヤニヤ笑った腹黒京地に。
そんなことを考えてふっと笑った。
きっと幸せってこういうことを言うんだろうな。
『さて、俺もそろそろ仕事するか』
携帯灰皿に短くなったタバコを入れて俺は秘密の場所を出た。
ただ、やっぱりいいことは長続きしないようだ。
俺はまた頭を悩ます日々が来ることなど知る由もなく、
今の幸せにバカみたいに浸っていた。