〈企〉バレンタイン限定彼氏
「繭……」


なんか言われるかな?


「嘘は駄目よ!

そんなに恥ずかしがらなくてもいいのよ?

“誰かを好きになる”っていうのは

誰もが通る道なんだから!!」


お母さんはそう言うと

ニッコリと笑みを零しながら私の頭を撫でた。


嘘じゃないのに…。

でもお母さんが「嘘」と思ってしまっても

しょうがないと思う。


だっていつもはそんな時間をかけないメイクをねんいりにして。

いつもはアイロンをかけてお終いの髪も今日は可愛く縛ってある。


そんな娘の姿を見て

(しかもバレンタインの日)

何にも思わない親はまずいないだろう。


「繭頑張るのよ!!」


もう、

何を言っても無駄なんだろうな。

この親は…。



でも、

まぁ……。



バレンタインっていう華やかな日に、

いつも以上にねんいりにメイクして、

いつも以上に可愛い髪型をしちゃった私も悪いんだけどさ………。



私は、

鏡に映る自分と睨めっこをしながら、


ニコッと微笑み

家をあとにした。
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