憂鬱な姫君 (姫シリーズVol.5)

L・A

「でっか・・・」

右を見ても、左を見てもその高い塀の終わりがどこかわからない

目の前でかたく閉じられた門の左右には監視カメラ

そして、その前で立ちすくむ少女に鋭い視線を向け、歩いてくるのは警備員

「プレゼントも手紙もここでは一切受け取れないよ。それに今は不在だし、待っていても会えないから帰りなさい」

ココがそれを無視していると、英語が通じないと思ったのか

「カ・エ・レ」

とカタコトの日本語が飛び出した

きっと日本人も多くここを訪れるのだろう

「帰らないわ。ココが尋ねてきたって連絡とって。潤也と姫花の娘が来たって言って」

ココが流暢な英語で言い返すと、一瞬驚いた警備員だったが

「だから今夜は帰らないから無理だ。いくら治安がいい地域だといってもおまえみたいな子どもがひとりでフラフラするんじゃない!」

すこし声を荒げた警備員に不服そうな顔をしたココはそのまま警備員に背を向け、そのまま歩き出した

ようやく帰ったか・・と警備員が警備室に戻り、ふと視線を移した監視モニター

そこにうつるのはさっき帰ったとおもった女の子が膝を抱えて門の横に座り込む姿だった

そんな姿に呆れた警備員は、ココの姿を見なかった事にして、仕事にいそしんだ

そして、時間になり、交代の警備員が来たので、仕事を引き継ぎ、警備室を後にしたのだった
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