堕ちる(仮)
東京で
歌舞伎町のキャバクラで働き始めたのだ。


新宿は目まぐるしかった。


入るお金も出て行くお金も今までとは桁が違った。


ブランド物を買い漁り、夜は寝ずにカラオケをしたり、酒を飲んだりの毎日だった。


 そんなある日、一人の男と出会った。


この辺のシマをしきっているやくざの若い衆だった。


いつの間にか付き合うようになり、私は彼の家に住み着くようになった。
 

彼はマリファナの売人もしていた。


チェーンスモーカーだった。


当然のように私も吸い始めた。


ハイな時は嫌なことは忘れられた。


吸いすぎた次の日は吐きまくった。


最悪な気分だ。


そしてそれを忘れるようにまた吸う、吐くの繰り返しだった。

 
そんな荒んだ生活をしていれば、仕事がおろそかになるのは当たり前だ。


遅刻、無断欠勤がかさみクビになった。


自然と家に入り浸り、私もチェーンスモーカーの仲間入りをした。


 ある日私は彼と出かけた。


駅の路地裏。


「これをアイツに渡して来い」


私は言われるがままにした。


私の初めての取引だった。


最初は何のことかは解らなかった。


数を重ねるうちに理解してきた。


そして、一人で行かされるようになった。


お金も自然と入ってきた。
 

人生なんて簡単だとそのときは思っていた。


自分が流されているとも知らずに…。
 
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