鬼神の舞

娘の名は真白(ましろ)

彼女は町の近くにある花作りの里“廣川の庄”に住んでおり、両親と共にそこで花を作っていた。
真白は毎日、庄で作った花を箕舞の町に売りに来る。
頭の上の大きな籠に季節の花を乗せ、往来を美しい声で触れ回りながら売り歩く。
彼女は名前の通り、色が白く利発そうな瞳が愛くるしい娘だったので贔屓にしてくれる客もいた。


今は如月

花が少ないこの時期は、蝋梅の枝が良く売れた。
夕刻には、頭の上の籠もすっかり軽くなり彼女の懐の財布にはそこそこの銭が入った。
それでも、時には売れ残りの花が出る。
残った花は翌日の商いにはまわせない。

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