胸キュンMonday ~甘く切ないすれ違いの恋~


ピク…



「殺さないでくれよ・・・わしは、まだ死なないよ・・・」




静かに目を開けたお父さんは、俺の手を優しく握り返してくれた。




俺、



抱きついてしまった。






……ガラガラ





「…たっくん!!!!」




お父さんの温かいぬくもりを感じて、涙が止まらなかった。




ん?




顔を上げた俺の目に映ったのは…




大好きな


大好きな


ゆかり…






「たっくん!!」



「ゆかりぃ!!」








俺は、今度はゆかりを強く抱きしめた。



久しぶりのゆかりの髪の匂い。


柔らかい背中…




「ゴホン…卓弥君、わしを忘れてないか?」



やっべぇ、俺。


お父さんの前だった。




「あははははっ!!ウケる~!」


扉を持ったまま爆笑する妹のまあちゃん。


その横には、直とお母さんと先生が立ってた。





「たっくん!ごめん!!俺、勘違いしてた。中田のお父さん、命に別状ないって!俺も混乱してて、直から泣いて電話かかってきたから・・・ヤバイのかと思ってて…」




………俺の体はみるみるうちに熱く、顔はりんごのように真っ赤になった。




「…マジ……お父さん、すみません…聞いてなかったですよね?」


俺は、ゆかりの手を握ったままお父さんに近づいた。



「…全部、一言も聞き逃さずに覚えてるよ。ここで、発表してもいいか?」



お父さんは、ペロって舌を出し、笑った。



俺はまた涙が出そうになる。



先生の勘違いで・・・良かった。


俺は


お父さんといつか酒、飲めるよな。



お父さんといつかゴルフなんかしちゃったりして…





泣いてる俺見て、みんなが声を押し殺して笑ってた。





窓の外には


さっき俺が見てた月がより美しさを増して、輝いてた。





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