5分間の愛撫【超短編】

いつからだったっけ?


出勤前のメイクに、今までよりも時間をかけるようになったのは。


サービス残業の鬱陶しさよりも、その時間を待っている自分がいたのは。


そう、きっと出逢った瞬間から始まってたの。





就業時間を過ぎて、人気がなくなったフロア。


あたしと数人の、パソコンに向かい合う、早く帰りたくて仕方のない人達。


そんな中、営業を終えた彼が、契約書を抱えて戻って来る。


そして、パソコンに向かい、それを入力していく彼。


一人、一人と帰って行く中で、いつしか二人っきりになったあたし達。


「いつも遅くまで大変だね」


そんな会話がいつしか


「いつか飲みに行きたいね」


そんな風に変わって。


お互いに気に入ってるって事くらい、少し馬鹿なあたしでも気付いてた。



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