相合傘



…ぇ、え?今何て言った?

男としてでも?女としてでも?
……俺が女って、知ってる!?



「ちょ、ちょっと待てよ!!」

部屋に入ろうとしたアキラくんを俺は慌てて引き留めた。

「…何」
「俺が女って知ってんのかよ」
「知ってるけど?」
「こ、此処!アキちゃんの部屋なんだけどッ!!」
「そうだけど?」
「あ、アキちゃんは?」
「あ~、何処でしょう?」
「や、俺が訊いてんの!!」
「知りたい?」
「知りたいも何も、一週間も見てねぇんだから心配になるよ」
「ほぉ、心配してんだ」

ニコニコと笑いながら、アキラくんは部屋の中に引っ込もうとして、扉を自分の方に引いた。

「ちょっと、どの質問にも答えてないじゃん」
「…だって、答える必要無いし」

次は困った様に笑って、シッシと俺を掃う。
何なんだよ、コイツもッ!!
アキちゃんの部屋の中の暗さに慣れてきて、悪いと思ったけど、ちょっと部屋を覗いた。
向こうに、居間の入り口辺りに…何か…。
茶色の、糸の様だけど…あんなに一遍に茶色の糸があるのは尋常じゃない。

…あれは……茶色の、髪…?

「アキちゃん…ッ!?」

俺はアキラくんの隣を抜けて、靴を乱暴に脱ぎ捨てて、アキちゃんの元へ行った。
もしかして一週間も姿を見なかったのは……、



アキラくんに監禁されていたからッ!?


 
そして俺が見たものは…、






「ぇ、何…コレ」






想像外の光景だった。


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