気まぐれお嬢様にご用心☆
はぁぁぁ……大きな溜息をついたところでこの現状は変わりはしない。とにもかくにも、俺は『女』としてこの『清華女子学園高等部』に入学することとなったのだった。



「今日から一年A組の仲間となります、波柴千晶です。よろしくお願いします」

因みにこの学園は幼稚園~大学(いわゆる、エスカレーター式ってやつ)まであってお嬢様の中では有名らしい。

「流石、女子高だけあって女ばっかだなぁ~」
この女だらけの学園で俺の青春は散っていくんだな。
しかも……。この状況は決して油断できる状態ではない。
俺は『男』ではなく『女』として学園生活を送らなければならないからだ。


「あんたもよくそんな恰好引き受けたわね。でもよく似合うわよ、端から見れば女のそのものっ」

最悪なことに翼とは同じクラスになってしまった。
しかも隣の席。この場に楓が居なかったことだけでもよしとしなければ……。悲しいけれど今はこうやって自分を励ますしかない。

「うるせーやい。俺だって好きでこんな恰好してるわけじゃないっての!いいか!このことは秘密なんだからな。誰にも言うなよ!」

「はいはい。あんたこそくれぐれもボロを出さないように……バレたってフォローしなくてよ」

「お前のフォローなんていらねぇや!それよりこの教室内では半径三メートル以内に俺が居ることになって残念だったな」

隣の席との距離はわずか五十センチと言ったとこだろうか。

「まぁ……仕方ないじゃない。私だって子供じゃないんだからこれくらい我慢するわよ」

「本当、お前ら姉妹は気まぐれだよな」

昨日あんな剣幕で突っ掛かってきた癖に。それに楓も俺にあのわさびチョコ食わしておいて、今日の朝なんて何事もなかったように笑顔で接してくるもんな。

これじゃ……怒る方もどうでもよくなってしまう。
逆にそれが狙いだったりして。

「もうすぐ一時間目始まるわよ」

「ああ……悪い、俺ちょっと校内散策してるから、代弁頼む」

「ちょっ、ちょっと~!全く、初日から授業サボるなんて、どういう神経してるのかしら」

翼は呆れた顔で彼の背中を見送った。
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