人間ペットショップ
さちは、固まってしまっていた。そんな彼女の様子を見た後、店員は、咳払いをしながら、笑顔をまた顔に宿した。

「申し訳ありません。お客様に対して、失礼が過ぎました。」

そう言って、深々と頭を下げる店員。
しかし、さちは、そんなことを気にはしていなかった。

なんで知ってるの?
その言葉が頭を埋め尽くしていたからである。なんとか声を絞り出して、彼女は尋ねた。

「…どうして?」
「は…?」

店員は今度こそ、質問の意味を掴み損ねたようだ。笑顔が崩れ、悩んだ表情を浮かべた。だが、さちは、それにも構っていられなかった。

「どうして、私が彼氏と別れたことを知っているの?」

そこまで聞いた店員は、納得した、という表情で答えた。

「それは、お客様がこの店に来られたからです。」
「え…?」

今度悩んだのはさちだった。少しの間を置いて、店員は説明し始めた。

「この店に入るには条件がございます。それは…」
「それは?」

さちは、1歩店員に歩み寄った。

「…それは、悲しみを埋めてくれる誰かを心の中で強く望むことです。」
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