オリジナル・レイズ

【最後の日】


雪の季節がやってきた。



今日、私と先生は、

全くんが入院している病院へ向かった。

意識が戻ったとの連絡がきたからだ。





久々の病院。



渡されたマスクをし、予防衣と呼ばれるガウンを身に着け、手の消毒を受ける。

これだけ装備しても、全くんの体に触れることはできない。


ビニールの簡易カーテンの向こうに、全くんがいる。


横たわったまま、全くんは動かない。


私は先生の顔を見る。

先生は立ち止まり、私に向って何も言わずにうなずき、行くように促した。



緊張して、ベッドへ向かう足が震える。

呼吸を抑え、一歩一歩近づく。

カーテンにそっと手のひらを置き、全くんの表情を伺った。



眠っているのか、起きているのか…

それでもかすかに、まばたきをしているのがかろうじてわかる。


< 192 / 220 >

この作品をシェア

pagetop