ラブリー

俯いていた顔を上げると、肩で息をしている…琉生が立っていた。



「バカやろう…心配させやがって」



そして膝を曲げ…しゃがみ込むなり、あたしを腕いっぱい力を込めて自分の胸の中に閉じ込めた。


「勝手に勘違すんなよ。誰がお前とキスするのヤダって言った?」


「グスッ…。だって…いつもは1発で決めるって監督さんが言ったもん」


「それはたとえ演技でも、好きでもないヤツと何度もキスしたくねぇから…一発で決めてんだよ」


「う…そ」


「それに…演技でお前にキスするなんて…できなかった」


そのセリフにビックリして視線を向けたら…


「誰のために“王子様”なんて呼ばれるようなアイドルを目指したか…わかってねぇな」
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