優しい嘘


―そして、
次の日。


俊光が真剣な面持ちで

「話があるんだ」

と言ってきた。



あの娘から、
智江の来訪を聞いたそうだ。


「…何で俺に直接言わなかったんだ」

「…言ってどうなるの?」

「―お前が分からないよ」

―どうして?

10年も一緒にいるのに。


「手紙や電話もお前なのか」


智江は怒りを通り越して悲しかった。


「…自分のしたことに反省はないの」


俊光はため息をつき、



「毎日あったよ」



「お前には申し訳ないと、いつも思っていた。
瑠美にも、裏切っていることになるから常に心が傷んでいたよ。
でも、あいつと別れることがどうしても出来なかったんだ」


「瑠美は気付いています」

俊光は珍しく狼狽えていた。


「…え、本当か…」


そう言うと、
黙ってしまった。


「―あの娘と、すぐにでも別れて下さい。」



彼は暫く黙っていた。



「―彼女は、俺がいなくなったら…」


「娘とどっちが大事なんですか」




そう言うと、俊光はタバコを吸い、



「……そうだな」



と言い、


部屋に入っていった。





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