何も言えない程、
それでも愛してくれた












「佐介くん……私のこと、嫌いなの?」




突然陽菜が泣きそうな顔をして聞いてきた。



「…何で?」


「…最近、夏目くんと何かあるみたいだから」






すべてではないだろうけど、彼女は何となく察していたらしい。


俺と睦月の関係を……。








「何も…ないよ…」






俺はなるべく平然としたふりをして、笑った。



けど、その笑顔は震えていたかもしれない。






一番かわいそうなのは俺じゃない。


陽菜だと俺はこの時感じた。





俺が睦月と秘密の関係を持っていることを薄々感じながら、それでも俺を軽蔑せずに愛してくれた。




俺はそんな彼女を一番愛しているのに、何で睦月を拒まない?


それとも、拒めないのか?




どっちでも一緒だ。


俺はどちらか一人なんて選べなかった。











バカな男なんだ。












それは分かってる。






でも無理なんだ。



俺には…………。





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