冬うらら2
●
 メイの頭の中には、教会の結婚式の映像がよぎる。

 一人だけ早く結婚した、友人の式を思い出したのだ。

 指輪の交換を。

 あなたが私に。私があなたに。

 二人で同じものを―― その希望が、ガラガラと音を立てて崩れた。

 そうすると、じわっと胸の奥が悲しくなる。

 彼と、初めて同じものを身につけられると思っていたのに。

 一人ぼっちで指輪なんかしても、全然嬉しくなかったのだ。

「それなら…私も、いいです」

 店員が、カイトをどうにかその気にさせようとしてくれてはいたが、彼女はすっかり気落ちしてしまった。

 素敵な花を見つけて手折ろうとした瞬間、枯れ落ちてしまった。

 一瞬見えた、あの素晴らしさの光は、幻だったのだと自分に言い聞かせなければならない。

 一人でなんて、欲しくない。

「一緒にしないと…意味ないもの」

 それならいっそ、ない方が。

 ズシーン。

 今のメイは、アリが踏んでも壊れてしまいそうだった。

 そうして自分に言うのだ。

 ほら、見てごらんなさい、と。

 彼が自分のことをすごく好きだなんて錯覚するから、こういうしっぺ返しに遭うのだと。

 いや、好かれているのは間違いない。

 けれども、いまメイが錯覚したほどではないのだ。

 いけない、と自分でも分かった。

 無用に落ち込もうとしている。

 何でもかんでも悪い方に取って、自分を可哀想にしようとしていることに気がついた。

 慌てて、それを振り払う。

 このままじゃ、カイトを正しく翻訳なんか出来ないと思ったのだ。

 にゅっ。

 いきなり、メイの目のそばに、何か出てきた。

 近すぎて、一瞬何なのか分からなかったが、よく見ると―― カイトのワイシャツの腕であることが分かる。

 彼が、腕を突き出していたのだ。

 その顔は。


 これから、予防接種でも受けるかのようだった。

< 116 / 633 >

この作品をシェア

pagetop