冬うらら2
□
「あっ、あの…違うの…そうじゃないの」

 腕の中で慌てる身体が、何かを伝えようとする。

 しかし、不安に取り憑かれてしまったカイトは、腕を離したりしなかった。

「だ、だって………その…昨日…重かったでしょ?」

 すごく恥ずかしそうに、彼女が小さく言った。

 あぁ?

 一体何を言っているのか。

 重かったって。

 あ!

 そこで、ようやくカイトは配線がつながった。

 昨日の夜、メイを抱き上げてベッドに運んだことを思い出したのだ。

 いや、忘れていたワケではない。

 ちゃんと分かっていたが、今それが改めて話題にされるとは思ってもみなかったのである。

 そして、そんなことが理由で自分が避けられていたなんて。

 つくづく女の考えには追いつけない。

「んなことで…」

 あまりに驚いて手の力を緩めたら、彼女が赤い顔でぱっと見上げてきた。

「だ、だって…私、やせてるワケじゃないし…それに…馬鹿みたいに口開けて寝てなかった?」

 穴があったら入りたい。

 自分の寝姿なるものに、ちっとも自信がないようだった。

 まあ、どんな風に自分が眠っているのかを、知っている人間は少ないだろうが。

 しかし、カイトの意識は違う方向に掴まれていた。

『馬鹿みたいに口…』

 その彼女の表現がおかしくて、カイトは笑いをこらえきれなくなってしまったのだ。

 いきなり、衝動のようにわき上がってきたのを、止められないまま。

 さっきまでの心配が全部吹き飛んで、いきなり安堵してしまった追い風もあったのだろう。

「え?」

 その声で、『は! しまった!』と、カイトは自分の口をかぱっと押さえ笑いを止めた。

 まるで、彼女の言うことを肯定してしまったかのようではないか。

 誤解されて、落ち込まれでもしたらどうするのかと、カイトは何とか、それを防ぐための言葉を探そうとした。

 が。

「あ…止めちゃわないで…もう一回…もう一回笑って」

 彼女は、カイトのパジャマの裾を掴んで―― 既に、論点がズレてしまって。

 ソウマとハルコは、あと10分待たされることになった。
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