冬うらら2
●
 神様!

 たった一つ、ボタンをはずした。

 微かな抵抗もなく、するりと輪をくぐるプラスティック。

 震える指を、少し下に。

 次のプラスティック。

 そしてもう一つ。これで3つ。

 4つ目に指をかけた時、彼女は止まった。

 一瞬で熟睡したのでなければ、カイトはいま何が起きているか分かっているはずだ。

 しかし、ノーリアクションだった。

 一切、反応をしないのである。

 何で何も言ってくれないの?

 メイは、泣きそうな眉になっていた。

 神様…。

 一体、神様に何を求めているのか、呼ばれている方も大変だろう。

 何度も名前を繰り返されるのに、願い事は口にされないのだ。

 怖くて、彼女は口にも出来ないのである。

 ただ、その怖い考えの通りになりませんように、と。

 それが、願いなのである。

 もっと震える指で、残りのボタンをはずす。これが最後。

 カイトの胸だ。

 彼女を抱きしめる時、ぐっと触れあう胸。

 あたたかくて、強くて、彼女が好きなもの。

 メイは、その素肌の胸に―― ぎゅっと抱きついて、頬を寄せた。

 お願い……お願い!

 私を。

 ぎゅっと、抱きしめて。

 私を。

 愛して。

 それが、彼女の決死の思いだった。

 なのに。


「ダメだ!!!!」


 ばっと。

 いきなり、弾けたように動き出したカイトに、その身体を引き剥がされた。

 あ。


 神様。
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