冬うらら2

「こいつは!」

 ぎゅっと。

 背中から。

「こいつは…オレが幸せにする! 大事にする! 一生ぜってぇオレが守ってやる!」

 聞け!

 天国とか言うものがあるなら、今だけドアを開けて、耳かっぽじってよく聞け。

 メイを愛して大切に思ってるなら、オレを見ろ。

 オレの顔を覚えておけ。

 カイトが一生、いまの宣言を忘れないように。

 彼女を、うっかりにも傷つけてしまわないように―― 大事に大事に抱きしめて、ずっと笑わせていられるように。

 ちょっとでも約束を違えたら、呪いに来い!

 けど。

 呪われようと、誰から非難されようと、憎まれようとも。

「ぜってぇ…こいつを手放さねぇ」

 抱きしめる腕に力を込める。

 道は遠い。

 いや、ずっとずっと遠くていいのだ。

 遠ければ遠いほど、ずっとメイは隣にいる。

 それどころか、たどりつく場所なんかいらなかった。

「お父さん…」

 抱きしめた身体が、小さく呼ぶ。

 2月の風は冷たい。

 こんな平日に、墓地には誰もいない。

 けれども。

 カイトは、腕に花を抱えていた。

 暖かい、春と同じ匂いをしている。

 優しい人肌の鼓動を持っている。

 たった一輪の花。

「お父さん…この人が、一番好きな人。もう、反対しても…ダメだからね」

 カケオチしちゃうから。

 抱きしめた腕が、ぎゅっと強く握られた。

 もう、寒くなくなった。
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