冬うらら2

 が、しかし。

 今日に限って、カイトは会社に戻らなかったのだ。

 そのまま一緒に家に帰り、そのまま家の中まで入ってきた。

「今日は、もう会社には行かねぇ」

 そのカイトの一言で、彼女の予定はガラガラと崩れたのだった。

 一緒にいられるのは嬉しいし、今日は彼もゆっくり眠れるだろう。

 それを喜んでいるのは、確かに正直な気持ちだった。

 でも、セーターを完成させて、早くカイトの喜ぶ顔が見たいのも本当の気持ち。

 明日かぁ。

 ちょっとお預けを残念に思いながら、メイは今日の完成をあきらめることにした。

 のだが。

 好機が、やってきたのだ。

 カイトがお風呂に行ったのである。

 今なら!

 メイは、ダッシュでクローゼットに向かった。

 そして、大慌てで奥の方から紙袋を取り出す。

 最初は毛糸玉だけだったのが、いまはセーターの厚みですっかり膨れ上がってしまった。

 後は、端の処理をちょこちょこーっとするだけ。

 間に合うかもしれない。

 後ちょっと…。

 メイが、紙袋からセーターを取り出そうとしたその時。

 ガチャ。

 入って1分もしていないのに、お風呂場に続くドアが開いたのである。


 ドッキーン!!!


 口から心臓が飛び出すとは、まさにこのことだ。

 出てきたのは、カイトであることには間違いない。

 幸いだったのは、まだ彼女の手は紙袋の中で、セーターを引っ張り出していなかったことである。
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