冬うらら2

 何だか、ホメられてるような気がした。

 先生に『よくできました』の、桜のハンコをもらった時のように、顔が緩んでしまう。

 昔から、あんまり人に自慢できるような取り柄がなかった。

 勉強もそこそこ。運動もそこそこ。

 何でもかんでも十人並だったメイだったけれども、家庭科の時だけは先生にホメられることがあって好きだった。

 彼女の得意技は、地味なものが多かったので、余り周囲の評価にはつながらなかったけれども。

 ケーキを焼くよりも、里芋の煮っ転がしの方が得意だったのだ。

 しょうがない。

 ケーキよりも里芋料理の方が、作る頻度が高かったのだから。

 綺麗な刺繍よりも、ボタンの付け方が得意だったり、裾上げが上手だったり。

 でも、先生はちゃんとそういう地味なところを見てくれて、「大変丁寧に出来ていますよ。よくできましたね」とホメてくれたのだ。

 何だか。

 その先生に、ホメられている時のような嬉しさが出てきた。

 いや、相手がカイトなのだから、もっともっと嬉しい。

「あぁ…あったけぇ」

 苦手そうな口調ではあるけど、もう一度言ってくれた。

 嬉しい、嬉しい!!

 身体中が、落ち着かなく昂揚してくる。

 細胞の一つ一つまでが、嬉しそうにジャンプをしているかのようだ。

 ホメてもらえた。

 カイトに、ホメてもらえたのだ。
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