冬うらら2

 あっ。

 そんなカイトの早い心臓が、ビクッと反応する光景があった。

 次に踏み出した一歩で、彼女の身体が横に傾いだのだ。

 慣れない靴のせいで、バランスを崩したのである。

 危ない、とカイトが身体を動かしかけた直後。

 ぎゅっと。

 メイが、ぎゅっとソウマの腕にしがみつくことで、転ぶのをこらえたのだった。

 父親代理の方も、最初から分かっていたかのように、いかにもスマートに支えて見せる。

 まるで。

 彼ら二人の様子こそが、新郎新婦のようにさえ見える瞬間。


 ブチブチッッッ!!!


 限界だった。

 もう、耐えられなかったのだ。

 あの役は、自分のものだ。

 ほかの誰にも、絶対に代わらせたくなかったのである。


 カイトは。


 ヴァージンロードを、猛スピードで逆走した―― 教会始まって以来の新郎となったのだった。

< 376 / 633 >

この作品をシェア

pagetop