冬うらら2

 違う何かに気を取られているメイだったが、名前を呼ぶとはっと彼の方を向いた。

 そうして。

 花開く寸前のような、未完成で切ない瞳を自分に向けた。

 微笑みそうで、泣きそうで、愛しい思いの詰まった瞳。

 それが。

 それが、だ。

 間違いなく、カイト自身に向けられていたのだ。

 ぎゅっと、身体の芯が締め付けられる。

 きっと、この気持ちは彼女を抱きしめるまでは、決して完治することはないだろう。

 それまでは、ずっと身体の中で電流として残り続け、カイトの神経に触れ続けるに違いないのだ。

 そんな気持ちをこらえ、彼女に腕を貸す。

 そっと回される、手袋の指。

 この一瞬だけ。

 カイトは、「披露宴」という名前を行使したのだ。

 見ろ、と。

 そう、叫びたかった。

 この誰よりも愛しい女が、一番思っているのは自分なのだと。

 瞳を向けるのも、こうやって腕を組んでいいのも、誰でもない自分にだけなのだ。

 そして。

 2人の存在に隙間などないのだと、アピールしたかった。

 が。

 その気持ちは、長くは保たなかった。

 何故ならば、ケーキの前にたどりついた2人を待っていたのは、再びカメラの群れだったのである。

 口だけ笑って、目をファインダーにした化け物たちが、彼ら2人を撮り殺そうと、フラッシュの待機ランプをちらつかせているのだ。
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