レンタルビデオの女
第四話
偶然か、それとも必然か・・・

自分では無意識のうちに通り過ぎた、人や物との小さな出会いがその人の人生を大き
く左右することがある。



これはある一本のレンタルビデオに運命を大きく動かされる一人の青年の物
語・・・・・





今年は暖冬であり、3月上旬であるにもかかわらず、もう春の到来を思わせる、
「snow drop」の花の香りが混じった生温い風が吹いていた。



一体何秒、いや、何分経ったのだろうか。

達也は何も言うことができず、目をまるくしたまま、ただ茫然と立ちつくしたままだった。
彼女が死んだ・・・。幸田さんが・・・・・



あまりの突然の驚き、そして予想などできるわけがないこの空白の2週間の真相の姿
に対し、達也の心は「悲しみ」や「恐怖」を生みだすことができなくなっていた。

というよりも、その事実を理解できていなかった。ただ凍ったように止まっていた。



すると、その長い沈黙を破るように中年の男、いや、幸田さんの父親がおもむろに口
を開いた。



「ちょっと・・・付き合ってくれないかな?」


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