TSUBOMI
「全くもう‥恥ずかしいんだからっ」
周囲の目を気にしてか、由紀が俯きながらしかも小声で喋ったその言葉は、隣に座る亮にしか聞こえなかったようだ。
前に座る蕾は注文した3種類のハンバーガーにひたすら食らい付き、その隣にいる雅人はコーヒー片手に携帯をひたすらカチカチ。
亮も、
あはは‥‥
というような微妙な笑顔を見せただけで、ポテトに手を伸ばした。
「〜もうっ!」
「何、何で由紀怒ってんの?
あ、ハンバーガー食べたかった?まだあるよ、ハイっ」
バンッ
「違ーうっ!!!」
シーン‥‥
という表現がピッタリな静けさ。
由紀がテーブルを叩いた音とその怒鳴り声の激しさに、BGMまでも奇跡的なタイミングでストップした。
そして勢いよく立ち上がったままの由紀はというと、先ほどまでとは比べ物にならないくらいの注目度の高さに気付き、真っ赤になっていく顔を隠すように俯きながら
シュウーン
とまた着席した。
そしてそのあと、
「恥ずかしい奴だな。
大人しくできねーのかよ」
という雅人の言葉に由紀が声も出ない怒りを感じたのは言うまでもない。