生徒会長様の、モテる法則

6-4 結婚




「君が、鈴夏くんだね」




準備期間として設けられた一週間は、あっという間に過ぎていった。


その間、葵が接触してくることはなく平穏な日々を過ごせたわけで、文化祭に関する会議があっても私が代表者として参加することはなかった為ヤツと会う機会は皆無。


もう、このまま一生会いたくない。



そんな、文化祭当日。



くじ引きで運良くスイスの民族衣装を着ることになった私は颯爽と着替え、3年A組の出し物の会場となっているイベント棟3階第五調理室にやってくると、一般公開が始まる9時をようやく回った所だと言うのに部屋の前にヒゲを蓄えた長髪の大男が立っていた。

質の良さそうな甚平から覗く二の腕はしっかりとした、無駄のない筋肉が見える。




私がその大男に驚き調理室に入るのを躊躇い遠方から様子を伺っていると、その視線に気付いたのかゆっくりと此方を見た。



そして先程の発言。




「え、…はい。そう、ですけど…」





誰。

脳内のほぼ100%が、その言葉で埋め尽くされる。






「強い子を、産んではくれぬか」




??


勢い良く両肩を、大きな手で力強く掴まれ視界が揺れる。
鍛えられ力強い印象を受けるゴツゴツした手は、肩に食い込み気味でかなり痛い。


腰を落として至近距離、さらに真剣な表情で私を見つめるその瞳は、誰かに似ている気がするが誰かはわからない。




どうしよう、意味わかんないしこの人だれ。




「運慶様、なにしてるんですか」


運慶?



私の後ろから聞こえた聞き覚えのある声は、大男にかけられたようでその言葉に顔をあげた男は肩から離した手を軽く上げる。



「おぉ、秋斗!久しぶりだなぁ!」



え?

知り合い?


バニラの香りが鼻を掠めたと思えば隣に立ったのは青い浴衣を身に纏った久遠寺くんだった。

なにやら男と親しげに話している。


どうしたらいいのか解らず二人を眺めていると、久遠寺くんはそれに気付いて私をゆっくり見下ろした。



「来るのが早いんではなくて?お父様」


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