生徒会長様の、モテる法則


慌てて後ろを振り返ると、誰だか解りきった人物が、新聞をマジマジと眺めている。



いやぁぁぁぁあ!



もう、気分はサイアク。
扉の前で立ったままの私も悪いかもしれないが、要冬真、君が来る時間はもうちょっと後でしょうが!
そして新聞をじっくり読むな!

紙面からようやく目を離した要冬真と目が合い、その手にある新聞紙を取り上げれば、彼がニヤリと意地の悪い笑みを浮かべるのが解った。





「はっ、良かったな」





するりと横をすり抜ける、甘い香り。
私は、その言葉に一瞬固まり動けなくなる。

別に、何か期待していた訳ではない。


それでも、あまりにも自分に興味がないような言い方は今の自分にとって新聞沙汰になることよりも、周囲から質問攻めにあう事よりもなによりも残酷だった。



「鈴夏さん?」



頭に血が上るのと、胸に刺さった言葉の痛みを手伝って私は音がする程の勢いで振り返り、大股で要冬真の席まで向かう。
席について平然と洋書を読む彼の手から本を取り上げ、机に自分の手を振り下ろした。

教室中に広がる鈍い音。



じんじんと痛む関節に顔を歪ませながらも、私はゆっくりこちらを見上げた彼を睨み下ろした。



「どういう意味?」




「どうもこうも、そのままの意味だが?」




「賛辞の言葉のつもり?」


「そう聞こえたならそれでいい」




自分の怒りを、何に向けていいのか解らなかった。
彼が何の反応も示してくれなかった事?
そればかりか、興味のかけらも持ってくれていない事?
今も、迷惑そうに眉を顰めたままである事?




――…どれでもない




私は、自分自身にイライラしてる。
自分の気持ちも正直に言えない臆病さと、それから心のどこかで期待した彼の反応。
もしかしたら、話を聞いてくれるかもしれない、助けてくれるかもしれない。
そう思った自分の浅はかな心に。


どうしようもなく、腹が立った。




――…私、駄目だ





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