生徒会長様の、モテる法則

1-2 運気



「仁東鈴夏です、よろしくお願いします」




今まで特別、自分の運が悪いとか貧乏籤を引きやすいとか、そんなことを実感した記憶はない。

しかし今回ばかりは、自分の運の悪さに絶望する他無かった。

何故、このタイミングでこの状況で、私は殺気を感じなければいけないのかと。


定番の自己紹介をして頭を深く下げ、挨拶をした瞬間だった。
只ならぬ殺気に一瞬背中が凍る。
まさか、まさか…ね。




ゆっくり顔をあげれば、クラスの女子から感じる殺気、男子の好奇な視線、そして何よりも、後方真ん中の席で此方を睨みつける男の視線。



だー!!なんで同じクラスなんだよ!




私は口よりも手や足が先に出るタイプであり、頭に血が昇ると基本的に攻撃体制に入ってしまう。

唖然として動かない私に暴言を放ち歩き出したゴキブリ野郎の香水の匂いで我に返り、離れていく奴の背中に向かってまず一言。



“人を、顔で判断してんじゃねー!!!”



嗚呼私の馬鹿馬鹿虫野郎!
この先は思い出したくない。
鶏脳の自分を呪う、全力で。



私が席につくと、何事もなかったかのように授業が始まったため、教室内で一番の敵からの視線はなくなった。

奴の席は私より二つばかり前なのだ。

とりあえず一安心と言ったところだが、これからのことを考えると確実に失敗である。



朝の様子からいくと、奴は女子に人気の学校の大将だ。
しかも、あの目からビームが出るほどの殺気の感じからするとかなり根に持つタイプ。



(まぁ、背中から跳び蹴りされたら普通キレるけどさ)




それでも!それでもだ。
あの暴言はないと思う。
自分の顔がなまじ整っているからと言って、人を貶す態度は許せへん。




しかし教室のこの感じ、友達が出来ないどころか敵しか出来ないぞ。

黒板に書かれる計算式をとりあえずノートに書き写し、欄外に打開策を箇条書きにしてみた。


・知らないフリをする
・二重人格設定
・知らないフリをする

結局2つしか思い付かず、私は頭を抱えこむ。



「ねーねー!」


どんだけ私馬鹿…!


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