生徒会長様の、モテる法則

5-1 女好き





「ナゼダァァァァ!!!」




今や屋上は、私の場所と言ってもいいほどの頻度で訪れる、言わば日課に近いものになっていた。

心の叫びは思いに変わり音となって私の喉から飛び出し、空に消えていく。

誰も聞いていないんだから、これぐらい叫んでも何ら問題はない。



大体、無意味に痛む胸が悪いのだ。
そして叫びたい衝動に駆られた日に限って雨が降らないのが悪いのだ。



全部人のせいにしたい。




片想いに同調してる?
要冬真を“恋が実らない可哀想な人”と思ってる?

私がヤツの立場なら、なんて考えてる?





――…恋なんて、したこともないくせに





そんな私の心を映すように、空は雨が降っていないと言えど重たい鉛を落としたような色をしている。


明確な何かに、鉛のモヤがかかって見えなくなってしまい前が見えない。





「あー!よくわかんないけど晴れろ!!晴れろー!」





ダメだ。
私が念じようと重たく腰を下ろして退いてはくれない鉛を、睨み付けた。



あ、もしかして聞こえないのかな?



もっと近づけばいいのかな?


周りを見渡すと、屋上に入る扉の横に錆びたハシゴがかかっているのが目に入った。



灯台下暗しだ。



屋上の新しい一面を発見してしまった気がして少し嬉しくなり、ハシゴに近寄り手をかける。

上に登って叫んだら、気が晴れるかもしれない。

誰に見られるわけもないパンツを気にしながら錆びた金属を握りしめると、手のひらに冷たい感触が走った。

この感じ、久しぶりだ。



昔は空に近付こうと、手当たり次第に登ったものだ。


「…、よっ」



ようやく目線が、汚いコンクリートを抜けた所で視界に飛び込んできたのは鉛色の空ではなく、灰色の長い髪だった。





「なんや、儀式でもするんか?」




無造作に肩まで伸びた蜘蛛の糸のような髪に、風に揺れて覗く金色のピアス。

細い眉、前髪を一つに結んだ赤いゴムから綺麗な額が見えている。



「叫んでも、晴れんと思うで。梅雨やしな」



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