それでもわたしは生きている


突然男が運転席へ戻った。



??
終わり?
なんか…変な終わり方のような気がする…

この男が処女喪失から6人目といっても、まともな経験をしていないからよくわからない。


男は運転席に座ったまま、左手で私の右腕を掴んだ。

小さな声で

「何も言うなよ」

と言ったが、全く意味が分からない。

ふと顔を上げると


!!!
パトカー!!


1台のパトカーが、ゆっくり横を通り過ぎていく。

飛び出せ!

飛び出せ!
はやく!
本当に助かる最後のチャンス!

はやく!

はやく!



なんでだろう…

体が動かない。

男に腕を掴まれてるからじゃない…
コイツらへの同情でも絶対にない!

私は助かりたいはずなのに…

なんで?なんで動かない…



パトカーは、ゆっくり…
ゆっくりと、暗闇へと進んでいく。

男はまだ動かない。

私も、ジッと消えかけるパトカーを見つめながら、また誰にも聞こえない声で

待って…
行かんといて…
お願い…行かんといて…
助けて…お願い…


叫び続けた。


いつもはパトカーを見れば逃げていた私が、こんなにもパトカーを呼んでいる。
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