悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
同じ風に吹かれて、桜の花びらがひらひらと舞い降りてくる。

「気に、なるけど。
 記憶を消されるのは、困るわ」

実際、タクシーの中で我に返った志保さんは興奮しすぎて貧血にあって気を失ったと信じきっていた。

私もあんなふうに、潤のことなんてすっかり忘れさせられちゃうのかしら。
今あるこの時間もなかったことに……?

潤の髪についた桜の花びらを取ろうと手を伸ばす。
その私の手を潤が掴んで抱き寄せられた。

その見た目を裏切る意外と厚い肩に頭を預ける。
潤の手が私の髪を撫でる。

「いなく、ならないで……」

それとも。
どれほど強く願っても、彼はこの桜の花びらのように時期が来たらあっさりと散っていってしまうのかしら。


右手を鳴らすだけで、風とともに消えていったあの美形青年と同じように。
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