悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
それから、気がついて慌てて潤を呼び止める。

「それと、志保さんが倒れたのと何の関係があるの?」

潤はまるで回れ右でもするかのように、こちらを向いた。
一瞬。
春風が通り過ぎて、彼の髪をかき回す。

だから、なのか。
表情が読み取れない。

「あのさ。
 この前知った日本のことわざ。
 『虎穴に入らずんば虎児を得ず』
 『君子危うきに近寄らず』
 キヨミはどっちが好き?」

「……え?」


リスクを冒しても真実を知りたいのか――
これ以上、踏み込まないべきか――

私は頭を巡らせる。


正解なんて、多分、ない。

だから。

私は潤の手を掴んだ。

「今はどっちも好きじゃない。
 私が好きなのは潤だもの」

潤が何かを言い出す前に、キスで唇を塞ぐ。



知らなくていい、なんて思えない。
でも。
アナタを失ってまでは、知りたくない。


それが、今の私の答え―― 

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