悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
「でも、結果的にはシホさんは別の人に襲われてさ――。
あれはあれで、解決できて結果オーライなんだけど。
僕としては、最初の件が気になっていて。
それで確認したってわけ。
ま、あの様子なら問題ないけどさ」

「……ふぅん?」

「あれ?
 どうしてキヨミが拗ねてるの?」

子犬を思わせる瞳が、いつもより一回り大きくなって私を覗き込んでいる。

「だって、授業さぼるほど大事なんでしょ?
 その、魔王様のことが」

「大事って言うか。
 ……そうだなぁー。
 分かりやすく言うと、社長みたいなもんだよ。
 社長の機嫌損ねると首になったりするでしょ?」

その言い方が、あまりにも幼かったので私は思わず相好を崩す。

「首になると、困るの?」

「そりゃ、困るよ」

「どうして?」

私が首を傾げると、ふぅわりと、焼きたてのマドレーヌを思わせるような柔らかく甘い笑顔で潤が私を見つめてきた。



「キヨミに逢えなくなる」

瞬間。
そうでなくても、蕩けていた私のハートは。
すっかり、跡形もなく蕩けきってしまった。

そうして。
天使のような笑顔を携える、悪魔の中に落ちていく。
ためらいも、なしに。
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