Snow Drop~天国からの手紙~(下)【実話】
「…ウッ…ッッ…グスッ…アツシぃ…」

おばちゃんがせきをきった様に泣き出してしまった。

卓ちゃんは返事の無い、ドアに向かって静かに話だした。

「兄キ…しっかりしろよな…あこ姉が来たよ。

…笑って…抱き締めてやれよ!情けねぇな…」

…シーン。

やっぱり返事なんて返って来なかった。

でも、いつか、返事が返って来そうな気がして、ドアから目がはなせなかった。


あっちゃん!

あこ、今日も来たよ?
あっちゃんに会いたくて…

また甘ったれ!って馬鹿にする?

いいよ…
甘ったれだもん…

おもいっきり馬鹿にしても許してあげるから…

だから、今すぐ、あこを抱き締めて下さい。

しばらくドアを見つめているあこにおばちゃんが話だした。

「あこちゃん…今日はもう帰りなさい?

アツシの意識がハッキリしたら、すぐにあこちゃんに連絡するから…それまでは少し体を休めなさい。

…こんなに痩せちゃって……」

本当は首を横に振りたかった。

意識が無くても…
会えなくても…

近くに居たかった。

でも、おばちゃんのいう通りにした。

それから3日絶ってもあっちゃんは意識をとり戻さなかった。

そろそろ、不安がピークになってきた頃だった。

あっちゃんが昏睡状態になって5日後の、まだ残暑が厳しい日の事を忘れる事は出来ない。

最後の奇跡が起こった。

いや…あっちゃんが自ら起こした奇跡かもしれない。
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