「 」の法廷
はじまりのその三




 *



 妄想というのは一種の病気である。


 けれど、最近ではなかなか一般化されてきた言葉だから(まあ、ごく一部になるんだろうけど)。

 ひとえに妄想といっても人によってとらえ方は違って。


 たとえば──



 好きな芸能人。
 好きな創作作品の登場人物。


 それらと恋に落ちちゃう。そういうのを考えるのも、また、妄想と呼ばれていたりする。



 で、病気とそうではない違いってどこにあるのか。



 想像と現実の区別がついている健常者を普通の人。捕らわれていない人とすれば、

 私はその想像と現実の区別がついていない。想像世界に捕らわれた病気持ちとして見られる。



 でもね、想像と現実の区別ぐらいついているし人の顔だって物だってちゃんと覚えている。


 といったところで、妄想癖者は認識があるはずがない。

 のそれで話は畳まれてしまう。




 どうせ信じてくれないから。
 だからこの話はもうおしまい。
 人の輪から孤立して生きていくほど私という生き物は強くない。



 ──だから、そう。


 これは私の【妄想】だと。そう納得して終わらせるのが一番いいのだと。


 受け入れるしかないのだが……



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