あの時に戻れたら【短編】
「治りませんか…」


気の抜けた声で先生に聞いた。そうだ、早期発見で……その夢を一気に打ち消す言葉が待っていた。


「余命…半年ですね。でも、半年と言われて1年2年と生き続けた症例はいくつかあります。ですから笹木さんも…」


「1年2年ね…ってそれじゃあ短いんですよ!娘は22歳でまだ結婚もしてなくて、花嫁姿も孫の顔も見てないし、息子は来年高校へ入学して…ずっと夢だった野球をやりに頑張って勉強をしてきたんです!!!晴れの姿を見る前に父親が死ぬなんて…。妻は…私が居なくちゃ…どうしようもない奴で………。」



お父さんは顔をおおいながら泣き崩れた。


先生は冷静に問い掛けてきた。


「お父さん…酷な言い方かもしれませんが、余命の半年間…実質は薬の作用で3〜4ヶ月後にはベットの上の生活になると思います。ですからこの時間をどう過ごすかできっと笹木さんの気持ちも変わってくると思いますよ。」


「変わるって…結局死ぬのに何が変わるんですか。無念な気持ちしか残せませんよ…。」



お父さんがこんなに泣くのを初めて見た。お父さん…私がした事は間違ってた?お父さんを追い詰めたよね…。

ごめんね、お父さん。



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