【詩作家 スカキン】

 
移ろい代わる街並み
音の無い雑踏に佇み
君と言う温もりを失った僕は
水の無い海を泳ぐ
やつれた魚

巡りまた出逢う季節
色の無い部屋に寝転ぶ
骸を這う虫のようになった僕は
幾何かの安らぎを探す
溺れる魚

苦悩や戸惑い
妬みや羨み
壊れたビデオデッキに重なった
思い出と文庫本

喜びや悲しみ
聖者と罪人
カラーモニターに垣間見た
他人の愚形


笑い諂い
怒り声を上げ
哀しみ叫び
むせび泣いて
こぼれる涙を両手ですくって
水の無い海に返す

孤独を愛してやまない
哀しい人々の群れ
歩調は同じなのに
ばらばらと雨音のように
散り散りに響く足音

雑踏の中を歩く孤独な僕は
やつれた魚

ここは
水の無い海だから
< 70 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop