秘密~「ひみつ」のこと
翔一さんの
優しい
大きな手。

抱きしめられた
あの夜のこと、
思い出してた。

「こんなもんでいいかな?」

優しい手の感触が離れる。

離れないで!

こみ上げてきた、
熱い想い。

優しさだけ
受け止めるなんて、
もう、
できないよ!

あたし、
翔一さんが好き!

ベッドに起き上がると、
無我夢中で抱きついた。

だって、
きっと、
そうしないと、
そのまま離れて
また、
もとのまま、
翔一さんは、
物分りのいい
優しい
只の知り合いの男、
そんな関係に
戻ってしまうって
分ってたから…

「ユイちゃん、なに?」

そんな、
優しい顔で
とぼけないで!

「あたし、翔一さんが好き。あたしって、魅力ない?」

「そんなことない、君は眩しいほど綺麗だよ」

「嘘!折角旅行に来ても、部屋別々だし…」

何があなたをそこに留まらせるの?

あたしがあんまりみすぼらしくて可哀想だから、
優しいあなたは、
只ほっとけないってだけ?

「僕には妻も子供もいるし。君よりかるく十歳以上年上だし。こんなおじさん真面目に付き合うもんじゃない。君にはもっと相応しい人が現れるよ」

相応しいって、
こんなあたしに相応しい人なんて…

「女が裸で好きだって言ってるのに、抱いてもくれないなんて…やっぱりあたしそんなに魅力ない?」

なんか、あたし涙声。

だって、
ほんと、
悲しいんだもの…

悲しくって、
寂しくって、
消えてしまいたいんだもの…

せめて、
あたしの想い、
受け止めてよ!

翔一さんの腕が、
あたしを優しく抱きしめた。

「これより一歩でも前に進んだら、もう引き返せなくなる。君はそれほど魅力的だよ」

翔一さんは、あたしをベットにそっと横たわらせると、優しくキスをしてくれた。

唇から首、
首から胸、
胸からお腹…

優しいキス。

愛してくれなくたっていい、
あたしが、
翔一さんを好きなの、
こんな気持ち、
初めてなんだ…

あたし達、結ばれた。

今まで経験したことのない、
優しいセックス。

満ち足りた時間。

幸せで涙が出た。





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