『鏡の中のマリア』

心の病気

「記憶?」

『はい。
私の足りない記憶
戻してほしいんです。
催眠療法とか何でもいいです。
不安なんです。
先生私直ったって言いましたよね?
記憶の一部が欠落してるのに?
そんなのありえない!
自分が怖いんです。
私は麻莉亜を殺したかも・・
「落ち着いて藤井さん!」

先生が私の言葉を遮る。

ハァハァ―・・・

私は1年ぶりに精神科に来ていた。

私の担当医である橋本先生は
母親の元同級生で、
麻莉亜が亡くなった後も
病院以外でも親身になって
相談に乗ってくれていた。

久しぶりに見る先生は、

相変わらず渋くて、
知的なインテリ眼鏡の中に
ある瞳はすごく穏やかで
優しい印象をうける。


この人が父親だったらと
思ったことが何度かあった。


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