迷子のコイ
Act.6 色づく、想い
「アイリってさ、なんで
 カケルのこと名前で呼ばねえの?」


「え・・・そーだった?」


中学3年の5月、
俊哉から
そんなことを訊かれたことがある。


「『なんで』って言われてもなぁ・・・」


『クセ』とかでは
決してないんだけど、
なんでだろ?

俊哉のことは
『俊哉』ってすぐ呼べたのに
佐伯クンのことは
なんでか名前で呼べないや・・・。


う~ん・・・。
なんか、緊張する?みたいな?


「佐伯クンってさぁ・・・なんか
 オーラが独特なんだモン!」


「プッ! オーラぁ?」


あたしの話に
隣りを歩いてたナギが大笑いした。


「オーラって、あんた!」


俊哉もナギにつられて
ゲラゲラ笑い出した。


「もう、なによぉ!ふたりして!」


うまく説明できないけど
自分なりに頑張って
考えて言ったのにぃ!


あたしはぷぅ~と
ホッペをふくらませながら
そんなふたりを横目で見た。



『3-B』


その表札がかかっている教室を
ガラッと勢いよく
俊哉があけたその先には


『佐伯 カケル』くんが、待っていた―――――――。 





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