鬼畜王子の飼育方法




──カチャ。


いつもは気にもしない金属音が、今日はやけに耳に重く響いてくる。


重量感のあるドアを開ければ、まず視界に入ったのはお父さんの姿。


そして、


ベージュのスーツを身に纏った、見知らぬ女性の背中。


そのベージュが私に気づいてゆっくりと振り返った瞬間、


──ゴクリ。


思わず生唾を飲んだ。





「…貴女が、美希ちゃん?」




………!




しばらく、呼吸すら忘れてその姿に見入ってしまった。


だって───。


雰囲気があまりにも似てるから。

────お母さんに。





「…美希、とりあえずこっちに座りなさい」



呆然と立ち尽くしたままの私を見かねてか、お父さんが手招きをする。



< 205 / 294 >

この作品をシェア

pagetop