嘘恋
「じゃ、コンビニつきあってくれてありがと!」

沙織のうちの前。

「今日はたくさんごちそうさまでした!」

「なんもしてないよ〜」

「コンタクト見つけてくれたじゃん…、ありがと」

あの出来事がなかったら。

二人は…出会っていたのだろうか…。

あそこで 出会っていなくても…

きっと 千恵の家で 会っていたかもしれない。

でも そしたら こんなに 『偶然』を 感じることは なかったに違いない…。
「寒いから入れよ。おやすみ」



「おやすみなさい」

沙織は部屋に戻ると、ベッドにダイブ…。

今日はイロイロなことがあった。

一日を振り返る。

………

朋久のことばかりだ。

「あぁ…あ…」

気を取り直して 携帯をチェック。

メールが4通 と 着信が2つ。

千恵からのメール。

【明日、イロイロきかしてね】

母親からは

【電話してもでないから、どこにいるの?】

…隣にいたよ…。

留守電にまで、伝言。

そして マツからも…。

【明日、会える?】

【電話して!】

沙織は、マツに対して 今日 一日の自分の行動を 申し訳ないと 思いつつも…

マツへの返信が 出来ずにいた。

そして、あまりにもイロイロなことがありすぎた一日を考えながら 眠りについた。

そして、一方、…

斜め向かいの場所から、朋久もまた 今日 一日を振り返る。

俺は 何をしてんだよ…

確かに。

沙織は、かわいかった。
単に 自分好みだ。それだけだ。

俺には、【アイツ】が いる。

例え どんな理由にせよ。
自分に 【彼女】を 裏切ることなど 出来ないのだから。

今までも そうしてきた。
だから 今度だって できる。

沙織が ただ かわいかった。

ただ それだけ…。

寝ぎわに たくさんのことを考え出したら 止まらない。

さすがに 寝タバコは 他人の家でできない。

朋久は 外に出ると 斜め向かいの 沙織の家を眺めて 今日 最後の一本に 火をつけた。
< 16 / 74 >

この作品をシェア

pagetop