赤の疾風



「……うっ?

う……あ……っ!」


突如、まるで天地が逆さまになったかのような感覚を覚えた。

幾日か前にも起こった胸の痛みも、同時に。


さっきまでは何ともなかったというのに、今の梳菜の体は、明らかに異常だった。


「う、うぅ……ッ!

……ぅぶっ!!」


そして、口の中に溢れた苦いものを、一気に吐き出した。

地面に吐き出された、水のように透明な吐瀉物の中には…、


「あっ………。」



萬天から貰った松ぼっくりが、手から滑り落ちて浮かんでいた。




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