もう一度 笑って
「心臓?」

耳じゃないの?

「難聴っていうのは…嘘
本当は心臓が悪いんだ

しかも血液の型が特殊でさ
輸血も……大輔の血が必要不可欠

階段から落ちて
出血がひどいって聞いた時は
頭が真っ白になったよ

やっと智世の手術が目前になったのに
大輔からの血の提供がなきゃ
手術ができないから」

真っ青な顔で
保健室にきた海と朝倉を思い出した

あれは……智世の手術で必要になる血を抜いてて

朝倉が貧血をおこしてたんだ

金がなくて
病院に行かなかったのではなく

姉の手術が控えてるから
怪我隠して
病院に血液を提供していたと?

心臓の弱い智世のストレスにならないように
あたしを脅迫したんだ

すべては
手術のため

智世が元気になるために

朝倉があたしに牙をむいた

何も知らないあたしは
朝倉と智世が
浮気していると勘違いした

しかも見合いを壊したくて

智世の大切な人である
海を奪おうとした

智世の弱い心臓に

どれだけの負担を
あたしは与えたのだろう



朝倉の言う通り
あたしは
最低な女だった
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