もう一度 笑って
2月14日
午前10時ぴったりに
あたしは待ち合わせ場所に行った

海はすでに来ていた

制服ではなく
私服姿で
初めて目にした
海の私服姿を

長身に似合うロングコートの裾が
風で揺れていた

ふわふわの薄い茶色の髪も
なびいている

あたしは海に手を振ると
笑顔で近付いて行った

「小久保さん、どうしたの?
君も彼氏と待ち合わせ?」

「ううん
智世に頼まれの」

「え? 智世に?」

海の表情が一瞬曇った
眉間に皺を寄せるが
すぐに笑顔を取り戻した

「用事があるのを忘れてたって」

「智世がそう言ったの?」

海の声が低くなるが
笑顔は崩れなかった

グリーンの瞳が綺麗で
あたしは海の眼に引きこまれそうになる
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