もう一度 笑って

親友の彼氏の親友

「サンキュー!
今、すんげぇ
甘いモンが食いてぇって
思ってたんだよ

小久保って気がきくなぁ」

クラス一のお調子者である朝倉大輔が
あたしの手にあったチョコの箱を
奪い取った


荒々しく包装紙を破くと
高級チョコレートが
朝倉の口の中へと
投げ込まれた

「あ……ちょっと!」

「ん? なに?」

復元不可能となった包装紙と
結び目のなくなった赤いリボンが
教室の床に落ちていった

まるでスローモーションだ

満足そうに頬張っている朝倉の
後方には

床に落ちた包装紙を
寂しそうに見つめている智世が見えた

海にあげるはずの高級チョコが

海の親友である朝倉大輔の口の中で
溶けている




顔だけしか良いところのない男に
海への想いを食われた気がした
< 9 / 138 >

この作品をシェア

pagetop