water song(みずうた)
「ところで、旅人の噂って、いつからなんですか?」

セリの問いに、ゼルドさんが首をかしげた。

「えーと、何時からだっけか…な?」

“な?”の部分でゼルドさんはミゲルの方を向く。

「何でミゲルさんに聞くわけ?旅人から聞いたのは、アンタだろ?」

「いや、ミゲルさんも耳早そうだから、知ってるか思ったね」

ミゲルは、肩をすくめてから頷いた。

「まぁそこそこは、確かにミゲルさんの耳にも入ってくるけどさ」

悔しいけど、アンタより遅いと思うぜ、…と再び肩を竦めるミゲル。

「ミゲルさんが聞いたのは、そうだな、1ヶ月前の話…かな」

「そう、ボクが聞いたのもその少し前辺りね」

1ヶ月前…じゃ、何も分からないな。
何か色々あって、忘れそうだけど、私の記憶はまだ戻って居ないし。

そもそも、ガルンと出会ってからも2週間も経っていない。

「はぁ。」

何だか切なくなってきて、ため息をつく。

「疲れましたか?リールさん」

私のため息を誤解したセリが、私に問う。

私は首を振り、少し微笑んで見せた。

と、セリが抱きついてきた。

「リールさん、可愛い。」

そして、何故か撫でられた。

「はぁ…」

今度は、ミゲルが呆れたようなため息をついた。

「二人とも、ちちくり合ってないで、先に進もうか。」

「ミゲルは、あたし達の仲を裂く気ねっ」

セリが、可愛らしく頬を膨らまし、ゼルドさんがまぁまぁとなだめた。

セリが離れる直前、私に囁いた。

「辛い時は、無理しないで良いんですよ」

記憶もないし、ガルンも居ないけれど、一人でない事に感謝した。
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