water song(みずうた)
どうやら、私を見ているようだ。
…という事は、彼の言う所の“スゴいお客さん”とは、私の事なのだろうか?

「店員…さん?」

「そうそう、ボク、店長ね。」

妙にナマった片言のような発音だが、同じ位妙に色気のある声だった。

「で、何がスゴいんだ?」

ガルンが、自称店長さんから、私を遮る位置に移動しながら、尋ねた。

さり気なく、利き手が剣の柄にかかっている。

「あ〜お客さん、短気は損気ね。
気が長くなきゃ、商売上がったりよ。発明も上手くいかないね。」

「どちらにも興味は無いのだがな。で?」

「マァマァ、お客さん落ち着く良いね。今実は、この眼鏡の試しをしていたのよ。」

自称店長によると、謎の道化眼鏡は、彼の発明品で、普通は見えないモノを見えるようにする眼鏡…らしい。

そして、今回設定した“見えないモノ”は、この世界に漂い、またはあらゆる物質に宿る、スピリチュアルな存在、一部の地域では神とされている存在…だそうだ。

余談だが、その一部の地域では、竈(カマド)には竈の神が、トイレにはトイレの神が、言葉にも神が宿り…という具合に、八百万(ヤオヨロズ)の神々が居ると信仰されていると聞く。

難儀な事だ。
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