出会う確率の方程式
勇気の柔らかい唇の感覚が抜けないあたしに、

こ、こ、今度は、

名前で呼ばれた!



もう駄目です。

混乱と嬉しさから、涙が流れた。


そっと、勇気はあたしの涙を拭うと、微笑んだ。

「睦美…。俺は、しばらく旅にでる」

「え」

まだ頭がパニックになっているあたしは、勇気の言葉を理解できなかった。

そんなあたしに、勇気はゆっくりと優しく、言葉を続けた。

「心配しないで。俺は未来には帰らない。この時代に留まり、この後生まれてくる俺達の子供…いや、すべての人の為に生きることを決めた」

そして、あたしを抱き締めた。
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